THE LONG LONG GOOD-BYE・・(永いサヨナラ・・)



この記事は・・どこかの店や誰かを


非難するものではありません


とても個人的な私小説ようなもの


ただ長い事書けなかった僕の思いを


綴ったものなのです・・
















ノリオ・・・


僕は車を飛ばした ギリギリで信号をすり抜け

クラクションを鳴らし 飛ばしに飛ばした・・

やがて信号に捕まり 僕はクソッ!と

ハンドルを叩いた



目を閉じ、ハンドルに額をつけ それに頭を

打ち付けた  ゴツゴツと何度も・・

今も彼のいたずらっ子のような笑い顔を

鮮明に思い出す




彼を辞めさせるべきじゃなかった・・


どんなことをしても

引き留めるべきだった


彼は若くに結婚をしていて


綺麗な奥さんと可愛い子供がいた

僕もよく手料理をご馳走になったものだ

素敵な家庭だった・・



僕もとてもその家族が好きだった


しかし ひょんなことからこの家庭に

不幸が続く・・借金が増え 家庭は荒れた


そして・・



彼は離婚をした



時代はカリスマ美容師が全盛の頃

一般紙でも見たことも無いカリスマが紙面を飾っていた


彼が僕に退店を切り出したのはそんな頃だった・・



何度も説得した でもダメだった


きっと 今考えると いろんなものから

逃げ出したかったのだろう


最後の話し合いの時・・


車の中で2人で話し合った



「店長じゃダメなんだよ・・」



僕も2店舗目を出し軌道に乗せ、さあ3店舗目!


って頃だった・・給料も手当も上乗せした・・


毎日のように飲みに行き夢を語った


それでもダメだというのか



僕は諦めた


というか 


白けたのだ・・


もういいやと思った



そして彼はお店を去って行った




彼が最初に選んだのは


大企業の「T・・・」 その巨大美容室会社が


大都会の一等地に 巨大美容室を作るというのだ


そこに入った



もともと腕はいい美容師だったから


彼はあっという間に店長みたいな役職に


上り詰めた・・ 一年かからなかったと思う


競い合う店内 最終受付もあっても無いようなもの


彼は 夜遅くまでお客様を担当した 


毎日のように懸命に働いた



「きついけど・・楽しい!」 

と彼は言った・・


稼いだ! 借金も順調に返してる


顔つきもファッションも変わった


雑誌にも載った!と報告もしてくれた


中古だけどベンツも買えた・・



そして新しい彼女もできた


もう同棲してるらしい



いい子だった・・Y子ちゃんって言ったっけな・・


確か一緒に焼肉を食べたのを覚えている




僕の方は彼に辞められて結構 苦労したけど

メンバーも安定し売上も悪くなかった



お互いの成功を祝った・・



でも 彼の人生に またもや



暗雲が立ち込めてくる




そう・・




美容業界を震撼させた あの事件





「カリスマ美容師無免許問題!」




もう時効だから言うが・・



彼も免許がなかった・・


カリスマの中にも結構 いたらしい


業界紙でも 髪を作るカリスマ美容師に免許の


確認を取るようになった・・


確かにそういうグレーゾーンはどの業界にもある



美容業界も・・



免許より美容師の腕が優先!


そういうの価値感がこの業界にあったのも事実だ・・



そのうち そのうち・・と先延ばしにしてた美容師が


少なからずいた




彼は一気に干された



表に出るな! 裏でじっとしていろ!


体裁を気にする大企業だ・・


ディレクターの彼が


無免許と言うわけにはいかない


収入は激減し・・


彼は店を辞めた



そこから大型店を渡り歩き


その代官山のお店に落ち着くことになる



そして




彼は・・





死んだ





ハンドルに頭を打ち続けた・・




「ププーっ!」





後ろからクラクションが鳴らされる




「うっせーよ!バカっ」




僕は目を開け アクセルを踏み込んだ



やがてそのお寺に着いた



車をお行儀よく止めてる時間も無かったから



寺の前で僕は車を捨てた・・



黒服の人だかり



僕は営業を抜け出してきたままの恰好・・



確か淡いフラワープリントのシャツ でも関係なかった



入口の塀の陰で 誰からも見えないように



泣いている女性がいた・・


地面にへたり込んで泣きじゃくってる感じだ




Y子ちゃんだった・・



足を止めかけたが時間がなかった



無性に腹がたった 


づかづかと中に入っていく


みんながこちら見る・・




ざけんなよ・・お前ら


俺はノリオを10年間鍛え 


苦楽を共にしてきた 仲間だ! 


いいとこお前らなんて


1~2年の付き合いだろ!


どけ!


道を開けろ





心の中でさけんだ・・



人だかりに中に 棺桶に入れられたノリオがいた



今 まさにその蓋が締められようとしていた・・




ノリオ! 


バッカ野郎・・てめえ起きろ!




叫んだ・・



彼は優しそうな表情で静かに眠っている



なんか言えよ・・ノリオ・・



また釣り連れててってくれよ・・



またバーベキューやろうぜ・・



おい・・なんか言えよ・・



ノリオ!




彼は何も答えてくれなかった・・





釘が打ち付けらるとみんなも泣いた



年老いた彼の母親が泣き叫ぶ・・




僕はそれ以上見てられなかった



遺影の写真を眺めた・・



大好きな釣りの恰好をした優しい顔




そんな写真だった・・



ばかやろ・・



小さくつぶやいて焼香を済ませた




元家族もいる 子供も大きくなっていた


なるほど なのであのY子は表だって出て来れないのか・・



朝起きた時冷たくなったノリオを見つけたのは


Y子だったと聞く・・



再婚はしていない 可愛そうに・・ 


それぞれに立場があるのだろう




なんか悲しい・・





その会社の社長が挨拶をしている


内容は覚えていないが



怒りが静かに癒えていく・・




これだけの立派な葬儀を社葬にて執り行ってくれた



この「A・・」と言う会社に感謝したい・・



やはり大きくなる会社と言うものは


トップの人の覚悟が違うものだと


この時思い知らされた・・



僕は自分勝手な怒りや感情を恥じた



もし僕だったら こんな立派な葬儀なんてできない


前の会社の「T・・・」からも来てくれてるようだ・・



ノリオ・・お前 うちを辞めてから



本当にいい会社を渡り歩いてきたんだな・・




最後 いい美容師人生を歩んだんだな・・







涙が出た・・





俺も もっと美容師頑張るよ・・



と誓った



僕は自分の不釣り合いな恰好と敗北感に



いたたまれなくなり その寺を後にした・・



Y子に話しかけようと思ったが もうそこに彼女はいなかった




帰りながら僕は妙な感情に包まれながら運転をしていた



悲しいというより・・


ん・・なんだろ・・




あがらえない喪失感の中に



美容師っていう職業を誇りを持って



やり続けたい・・



いや



やらなければならない・・





僕は窓を開けた・・この季節特有の



気持ちいい風が車の中に入ってきて



僕を包み込む



ラジオをつけた・・




お昼のクラッシックみたいな音楽をやってて


たしかショパンだったと思う



少しだけ悲しい旋律が流れてきて 僕はその音楽を聴くというより



受け流していた・・







「ノリオもう会えないんだな・・」




とつぶやいた瞬間にそのショパンは僕の中に




すっと入ってきた





いきなりだった・・



涙があふれ出てきた


ノリオ・・


涙と嗚咽があふれ出た




僕は車を止めた




大きなグランドの横に車を止めて




僕は泣いた・・



我慢することも



誰に恥じることも無く





思いっきり泣いた・・





よし!前に行こうという気持ちと



ポッカリと大きく開いたその喪失感との




バランスが上手くとれないのだろう・・




ハンドルを抱え込むように泣いた



ほんの少しだったのかもしれないけど



僕にとってはノリオとの最後の別れの時間




それは永遠だった・・




やがて僕は顔を上げ



涙を拭いた




「さあ店に戻ろう!」




みんな待ってるはずだ・・





5月の綺麗に晴れた午後




僕はゆっくりと車を走らせた・・






「さよなら・・ノリオ・・」


       


         おわり










あとがき



彼の死因は脳関係だったと思います


最初に「過労死」と書いたのは僕の勝手な勘違いで


そういう風に思いたかったのかもしれません


彼が死ねわけない・・誰かに殺されたんだ!


そういう風に考えたかったのかもしれません


もともと彼の寿命だったのでしょう・・


誰も悪くはなく 彼が彼で選んだ人生だったのでしょう


偶然と偶然が重なり僕は葬儀に出ることが出来ました


きっと彼が 「オイ!店長も来いよ!」と呼んでくれたのかも


しれませんね・・



たぶん これを読んでいるのは、美容師さんでしょうか?


とても美容師は素敵な職業ですね


でも度を超えた労働や目標設定はやはり


「心」 と 「身体」 を蝕んでいくようです


20代はいい・・でもその先には40年間という



長い長い美容師の道が残っています



無理をしないで下さい



どうせ無理するのなら 


「楽しく無理をしてください!」


楽しくない無理はきっといつの日か



貴方を壊していきます



個人差もあるでしょう・・


貴方にあった素敵で楽しい 美容師ライフを



まっとうして欲しいと思います



最後 僕がこの記事を書きながら



ずっと聞いてた曲



ショパン 「別れの曲」



この曲に僕はなんども勇気つけられました



それではまた どこかでお会いしましょう
























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by overmax0420 | 2013-05-01 07:49
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